約 1,012,588 件
https://w.atwiki.jp/aoari/pages/6326.html
陰陽師 攻撃術 式神召喚・参 目録 召喚術・伍? 必要気合 1120 必要アイテム 呪符 ウェイト 2 効果時間 式神が倒れるまで 発動準備 なし 使用場所 戦闘専用 効果 ランク3の式神を召喚し、ともに戦わせる。 特徴 憑依攻撃(敵単体に若干ダメージと確実に呪い。ウェイト?) 憑依回復(召喚者を回復。ウェイト?) 憑依付与(召喚者にランダムで付与。ウェイト?)が使える 敵の攻撃の対象になる その他情報 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5179.html
前ページ次ページときめき☆ぜろのけ女学園 トリステイン魔法学院、春の使い魔召喚の儀式。 それは2年次に進級する学生達が使い魔を召喚・契約し、自身の魔法属性と専門課程を決める重要な儀式だ。 しかしルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは既に使い魔召喚の呪文を数十回詠唱していたが、周囲には爆発で開いた穴が散見されるばかりで、使い魔に相応しい生物は影も形も見当たらない。 「ゼロのルイズは使い魔も召喚できないのか!」 「しょうがないよな。だってゼロのルイズだしさ」 生徒達の心無い声にルイズの胸は張り裂けそうになっていた。杖を握る手が震え、呪文を詠唱する口がこわばる。 コルベールは生徒達を下がらせてルイズの傍に立った。 「ミス・ヴァリエール、気負ってはいけませんよ」 「ミスタ・コルベール……」 自身の無能に落胆するルイズに優しくも力強くコルベールは説いた。 「使い魔はメイジの半身ともなる大事な存在です。そんなに落ち込んでいてはやってきてくれませんよ」 「でも私は……」 「無心に願いなさい。そうすればきっと始祖の導きであなたに相応しい使い魔を召喚する事ができるはずです」 コルベールの激励に、ルイズは呼吸を整えて再度杖を掲げる。 「宇宙の果てのどこかにいる私の僕よ。神聖で美しくそして強力な使い魔よ。私は心より求め訴えるわ。我が導きに応えなさい!!」 ルイズは願った。 (自分にも使い魔を、誰にも侮られない使い魔をください。魔法が使えない私にせめて胸を張れるような使い魔を……) 握り込んだ杖の先の地面が光を放って爆発する。巻き上がる土煙はこれまでの失敗よりもずっと激しく立ち昇り、広場を覆った。 「ケホ、ケホ……、つ、使い魔は?」 土煙が治まらないうちにルイズ・コルベールは爆心地を覗く。 「何これ……?」 爆発の中心地点だった場所の地面には何もいず、ただ地面が鏡のようにキラキラ輝いているのみだった。 「ほう、これは珍しいですね。召喚のゲートが維持されるとは」 「召喚のゲート?」 「ええ、ほかの皆さんの使い魔もこのゲートを通って召喚されたのですよ」 「ふーん……」 そう生返事を返しつつ、ルイズは好奇心からゲートに接近していった。 地面に置かれた大きな姿見のようなゲートをもっとよく見ようと、その縁に座って身を乗り出した……拍子にバランスを崩しつんのめる! 「え!?」 体勢を立て直そうとする間も無く、ルイズはゲートに飲み込まれてゲートごと姿を消してしまった。 『………』 コルベールを含め、その場にいる全員は呆然とゲートのあった地面を眺める事以外不可能だった。 ――ザー…… 頬に当たる冷たい感触でルイズは目を覚ました。 「え……、雨……?」 ぼんやりした頭を振って記憶を復活させる。 「確か……ゲート、そう、召喚のゲートに飲み込まれたのよね……。……ここはいったいどこなのかしら……?」 雨の幕の向こうを見渡すと、前後は果てし無く続く石畳でできた道、左右は無数に並んだ石柱群。 「もしかして、ここって墓場!?」 嫌な場所に放り出されたと言わんばかりにルイズは立ち上がり、 「とにかく墓場って事は人里に近いって事よね。こんな場所に長居は無用だわ」 そう言ってとりあえず前方に向かって駆け出した。 ……それから数十分後、墓地の出口いまだ見えず。 「こ、この墓場何でこんなに広いのよ!?」 後半の全力疾走がたたって息を切らしているルイズの視界に、人影が飛び込んできた。 「あ……」 そこにたっていたのは、ルイズが見た事も無い奇妙な衣服(正史において彼女が召喚した使い魔の故郷で「着物」という)を纏った眼鏡の美女だった。 (凄い美人……。でも何ていうか……、墓場にいるのが似合いすぎてる……。もしかして……、幽霊?) 「あら、見ない顔ね」 その美貌に一瞬ドキッとしたルイズだったがそれも束の間、 「あなた転入生?」 「……っ」 顔を接近させてきた女性にルイズは硬直した。 それはそうだろう。女性の体はルイズのいる位置から1メイル程度の距離を維持している。にもかかわらず女性はルイズに顔を接近させてきたのだ。 ……首を伸ばして。 (怪物!!) 驚愕したルイズはその場から一目散に闘争したが、女性は首を伸ばして追跡する。 「ひ……、あっ」 「嫌ね。何をそんなに驚いてるの?」 「きゃ」 ルイズの進路を封鎖するように、女性は頭部を逆さ吊りにしてルイズの目の前に顔を出した。 「わかったわ。その慌てよう、学校をサボるつもりだったのね。いけない子。お仕置きが必要だわ」 「いやああ」 女性は伸ばした首をルイズの体に巻きつけていたが、突然その動きが停止する。 「あっ、い、いたっ、やだ、首つっちゃった。ちょ……、戻して戻して」 あまりに苦しげな女性の懇願に、ルイズは今自分が彼女の首に巻き付かれているという事も忘れどうすべきか考えた。 (も……、戻すって!? え、何、怖いし!! あ、でも凄く苦しそう……) ルイズはとりあえず出てきた首を引っ込めればいいとばかり、胴体を押さえて首を押し戻し始めた。 「こ……、こうかしら?」 「いたいたいたいたいたいたい!! 無理やり押し込むなんて何て非常識な子!! どういう育ち方してきたのかしら!!」 「ひ……、非常識って!! そんな常識知るわけないでしょ!!」 「あー、もういいから背中のほくろ押して。ほら! 早く!!」 「ほ……、ほくろ?」 見ると確かにうなじと背中の境目付近にほくろがあった。 「これ?」 とルイズが押した途端、 シュルルルル……バチンッ 「ふう……」 伸びていた首が勢いよく縮んで人間と変わらない姿になると、女性は安堵の溜め息を吐いた。 「……サボろうとした事は大目に見ましょう。さ、行きなさい。授業が始まるわ」 「あ……、違うのよ。私……、道に迷って……」 「そう、じゃあ一緒に行きましょう」 そう言うと女性は再度首を巻き付けたルイズの体を引きずり、墓地の奥の方にある木造の建物の方に連れていった。 「やややや、そうじゃないのよーっ!」 「はい、席に着いてー。今日は我がもののけ女学園に転入生が来ました」 木造の建物が何なのかわからなかったルイズだったが、通された部屋を見て学校である事が即座にわかった。 魔法学院と比べれば狭いものの、椅子・黒板・机と授業に必要な設備がひと通り揃っていた。 しかしそこにいる女子生徒達は明らかに異様だった。 目が1つの者、頭部に皿が手に水掻きがある者、獣耳のある者、角のある者……。一見して人間に見える者は皆無だった。 (な……、何……) すると椅子の上に奇妙な姿勢で座っている猫耳・猫しっぽの少女が興味深げにルイズを見て、 「転入生なんて何百年ぶりだろうね! びしょ濡れだけど濡れ女かな」 「やめてよ。あんな品の無いのが私と同種の訳ないでしょ」 そう否定した少女は、上半身こそ人間だったものの下半身は蛇だった。 (猫!? 蛇!?) 「お腹空いたね」 「あんた食いすぎ」 「でも何かいい匂いがする」 そんな会話を交わしているのは、緑・黄・赤の肌を持ち角が生えている3人の亜人の少女。 「ゴブリン!? ……あ、わかったわ、仮装パーティーね」 自分の目を信じられず無理やりそう納得しようとしたルイズだったが、 「匂う……」 「ひっ」 その言葉と共に顔を接近させルイズの納得を粉砕したのは、少女のような形の煙だった。 「処女の匂いがする」 「ほんとだ、処女の匂いだ」 さらに単眼の少女2人が追い討ちをかける。 (こんなのどう見ても人間じゃないわ) 「確かにこれは処女の匂い」 「匂う」 「匂うね」 「まさかそんな。人間じゃあるまいし」 「でも匂う」 (どうしよう……) 「それ……、人間なんじゃないの?」 冷気をまとった少女の言葉に、その場にいる全員がルイズに注目する。 「(な、何とか誤魔化さないと)え……と、ルイズ・ヴァリエール、せ……、西洋妖怪ハッグで……す……っ。よ……、よろしく」 「何だー、西洋妖怪かー」 「もーやだあ、びっくりしたあ」 「人間だったら……、ねえ」 「ほんとに……、ねえ」 「いろいろ……、ね」 「そう……、いろいろ」 「いろいろ?」 首を傾げつつ尋ねたルイズに少女達は、 「食う」 「犯す」 「イタズラしちゃう」 と答えを返したため、 「……ルイズ・ヴァリエール、西洋妖怪ハッグです。よろしくっ!」 ルイズは一生懸命「西洋妖怪」の部分をアピールした。 「(一刻も早くここから立ち去りたいわ!)――それで、あの、ミスっ、転入初日なんですけど、体調悪いんで早退してもいいですか?」 「確かに顔色がよくないわね」 「じゃあ私が送ってくよ」 そう声をかけてきたのは先程の猫耳・猫しっぽ少女だった。 「こんにちは、ルイズ。私は猫又のキリ」 「あ……、ありがとう。でも1人で帰れるから!」 「だって寮の部屋わかんないでしょ?」 「寮?」 もしかしてと思ったルイズの考えを裏付けるような女性教師の、 「我がもののけ女学園は全寮制です」 という一言で大きく打ちのめされたルイズだった。 「今空いてる部屋はここかなー。ペロと相部屋だね。ペロには私から伝えとくよ」 量の部屋に案内されて初めての和室を興味深げに眺めるルイズに、キリは簡単に相部屋になる生徒について説明した。 「じゃあゆっくり休んで、また明日ね」 「うん、ありがとう、キリ……(亜人だけどキリはいい子ね)」 そしてキリが部屋を出ていくと、 「でも私は逃げるけど」 と窓を開けてみたものの、 「ここどこ!?」 窓の下は断崖絶壁と荒海のため窓からの脱出を断念。それならと廊下の様子を伺うも、 「でか!!」 巨大な頭部のみの寮母の姿を見つけまたも断念。 「どうなってるのよ、もう! このままじゃ私モンスターや亜人に食べられるわ! どうにか……しないと……どうにか……」 枕に顔を突っ伏して善後策を練るも、疲労からやがて寝入ってしまうルイズだった。 ぺろ……ぺろ…… 何かが胸を触る感触でルイズの意識は覚醒し始めた。 「やだ……、くすぐったい……ですよ、子爵……。ちょっ……いや、そんな所……っ」 そこでルイズははっとして目を覚ました。 目の前では女性教師が着ていたような着物を着崩した少女が、ルイズの足を舐め回していた。 「んー、おいち。キリから聞いたよ。よろしくね、ルイズ。あたしはあかなめのペロ」 「……あかなめ……」 ペロの口から長く伸びた舌にしばし硬直するルイズだったが、 「お風呂はどこー!?」 夜の学生寮にルイズの絶叫がこだまするのだった……。 前ページ次ページときめき☆ぜろのけ女学園
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5950.html
前ページ次ページ絶望の使い魔 ルイズが外出許可を取って学院を出た。 その報告を受けたオールド・オスマンはすぐにルイズの使い魔のいる医務室に向かった。 医務室にいた水系統のメイジに席をはずしてもらい一人だけで残る。 ベッドには巨大な亜人の姿がある。杖を取り出しながらゆっくりと顔に近づいた。 顔に手を近づけるとたちまち亜人が黒い靄に覆われる。直接手で触れるのは危ないかも知れない。 そこで使い魔の目蓋を杖で軽く押し上げ瞳孔の様子を観察する。 どうやらしっかりと眠っているようだ。杖を離し、使い魔の上に小さな火の玉を作り出す。 その火をゆっくりと黒い靄に包まれた亜人に降ろした。 黒い靄に当たった瞬間火の玉は掻き消えてしまう。風が吹いているわけでもなく、 水が掛けられているわけでもないし、もちろん土による窒息消化を行っているようにも見えない。 さらに大きく作った火の玉を同じように亜人に下げていく。 前回の小さいときと同様触れた瞬間にすべてが掻き消えた。 精神力を多く使った火の玉でも消え方は同じであったことから込められた精神力を 吸い取っているわけではなさそうだ。 こちらの魔法の術式に無理やり割り込んでくればこのような現象が起こるかもしれない。 魔法を無効化する。エルフの魔法にも似たようなものがあったことを思い出す。 しかしあれはこちらが使役している精霊に干渉しているのだ。だから土地の精霊と契約を結ぶ必要がある。 オスマンはこの黒い靄は人の使う魔法の術式を壊してくる全く未知の先住魔法であると結論付けた。 術式破壊、これはとんでもなく恐ろしい。なにしろ魔法が効く効かない以前に全く届かないということだ。 しかしそれとともに対策もすでにオスマンの中に出来ていた。 術式が破壊されるなら破壊されないように作ればよい。 つまりは魔法陣など実際に地面に術式を描くことで干渉できないようにすればよいのだ。 ただ、間違いなく一撃で葬り去るためにも大規模な魔法陣を使った魔法を行使しなければならない。 その準備のためにも、やはりルイズには国外に出てもらう必要があるだろう。 使い魔に視線を向けながらこれからやらなくてはならない事を思い浮かべるとため息が出てくる。 オスマンは医務室を出た後、その足で大規模破壊の魔法を探すために図書館のほうに向かって行った。 ______________________ ルイズは恐ろしい壁にぶつかっていた。 使い魔を召喚して以来の最大のピンチにルイズは意気消沈し、ベッドの上で無気力に横たわっている。 前回の誘拐未遂からすでに1週間が経過している。 オークと別れてから現在地がわからず迷子になるかと思われたが自分が空を飛べることを思い出し、 すぐに上空から村を発見。そこで道を聞きなんとか夕暮れには学院に戻れたのであった。 虚無の曜日には頼んでいた制服を取りに行った。そのついでに諜報組織へ新生しようとしている旧血管針団の様子を報告してもらい、さらに例の巨大なオークから魔道書を貸してもらうことも出来た。 組織は意外と順調に人が集まっているようですでにアルビオンに何人か向かっていると返事が来る。 むしろヴァリエール家が後ろに付くならばと抜けていた者たちまで帰ってくるということまで起こっているようだ。一応人員はしっかり選別して無駄を無くすようにと厳命しておいた。 魔道書の方には挿絵としてたくさんの魔法陣が載っており、それの中にはルイズが調べようと紙に描いておいたものと同じものもあり、間違いなくこれからのルイズの展望を明るくするものであった。 しかしどんなことにも落とし穴というものは存在する。 ルイズはベッドに転がりながら魔道書のページを穴が空くほど睨みながら叫んだ。 「なんで読めないのよ!!!ふざけるんじゃない!!どこの文字よこれ!!」 そうルイズには魔道書の文字が読めなかったのだ。 もちろんルイズもその言語を調べるために学院の図書館に缶詰になり、文字について調べまわった。 ちょうど図書館にいたタバサまで巻き込みこの3日間ほどがんばったのだ。 しかし全く未知の文字であるらしくどうしようもないという結論に達してしまう。 そもそも始祖ブリミルが降臨して以来、大きく文字が変わることはなかったのだ。 もちろん少しずつ変化はしていったが別の文字を使うのはほぼないと言える。 知性のある亜人などが使う文字もあるにはあるがそのいずれにも該当しなかった。 もしこの魔道書を読みたいのなら一から翻訳していかなければならず、そのような技術はルイズにはない。 早く翻訳したいならアカデミーにでも持って行くべきだろうが、 それでも完成がいつになるのか検討もつけられない上に、 他の者にこれを訳してもらうことはこの先住魔法についての情報が漏れるという問題が発生する。 杖を使わない魔法についての情報は一番取り扱いに注意しなければならない。 よってルイズは不貞腐れていた。 手に入った魔法の詳細が書かれてあるだろうと思われる本が読めず何の役にも立たないのだ。 期待が大きかった分その失望は計り知れない。 その様子を見ていられなかったのかデルフリンガーが声をかける。 「娘っこよぉ。そう悲観するこたぁねぇよ。魔法なんざ二の次でいいじゃねぇか。 それより俺を振って剣技を磨こうぜ。 あのオークに付き合ってもらえば絶対に強くなれるぜ。 あいつの獲物は槍だが剣もそれなりに使えると思うしよ」 ・・・強くなる・・・ その言葉にルイズは反応するがやはり鈍い。ベッドから降りるとデルフリンガーを担ぎ上げぶつぶつと言葉をこぼし始める。 「魔法が二の次ですって?あんたふざけてんの?私は十七年間我慢してやっと魔法を手に入れたのよ。 それをさらに向上させることができるならなんだってやるわ。 私がこんな絶望を抱くはめになるなんて・・・これは使い魔の栄養になったかしら? でも不快な気分になったのはあのオークが悪いのよね。 こんな読めないものを持ってきてぬか喜びさせるとは万死に価するわ。 私刑よ。今から殺しに行きましょう。うん、そうしましょう。きっと楽しいわ」 途中までデルフに対して言っていたが、途中からニヤニヤ笑いだし、自分の世界に入ってしまう。 そんなルイズにデルフもあまり喋りかけたくはなかったが、 ここは冷静な判断のできる自分がしっかりせねばなるまい。 「落ち着けって。あのオークは強いぞ。それこそ嬢ちゃんでも勝てるかどうかわかんねぇ。 あとよその本はオークが持ってきたんだろ?じゃあオークは読めるんじゃないのか? 直接きけばいいじゃねぇか。話せなくとも身振りとかで判断できることもあるだろ」 ルイズは目を丸くさせてデルフリンガーを見る。 デルフリンガーを床に置いてから一度目をつぶり顔を天井に向け、思案するかのように腕組みをする。 そのまま首を捻ったりしながら10分ほど同じ姿勢で固まっていたが唐突にデルフリンガーを蹴り始めた。 「そう!いう!こ!と!は!早く言いなさい!無駄な時間使っちゃったじゃないの!!」 「ちょ、これは理不尽だろ!あっー!・・・やめて!・・・だめぇ!折れちゃうううう」 そのことに思い至らなかった恥ずかしさも手伝い、 闇の衣を全開にしたルイズは力の限りデルフリンガーに暴行を加えている間、 頭の片隅で魔法のついでに剣の修練もできるかもしれないと考えていた。 折られそうなくらい力を入れられたデルフはもう下手なことを言わないことを心に誓ったとかなんとか。 その日からルイズは授業をさぼり学院からよく外に出るようになった。 まじめな生徒だったルイズの素行の悪化を嘆く教師もいたが、筆記は問題なく成績がいいことと、 魔法が使えない上にせっかく引き当てた強力な使い魔もいまだ眠ったままという境遇のルイズには 同情が集まったことで大きな問題にはならなかった。 前ページ次ページ絶望の使い魔
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/481.html
その翌朝、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの一日は強烈な鈍痛と共にやってきた。 窓の外は空に薄っすらと白みが差し始めたくらいで、まだ太陽が昇ってすらいない。 こんな時間に起きてしまって、馬鹿らしい。 「二度寝よ、二度寝しかないわ」 そう呟いてベッドに戻るも、ズキズキと痛む額のせいでとてもではないが寝てなんていられない。 なんで私の頭はこんなに痛いんだ? そもそも私、昨日ってどうやって眠ったんだっけ? 鈍痛に苛まれる胡乱な頭でそんなことを考え、ルイズはガバッとベッドから身を起こした。 「そうよ! 私、使い魔! ~~って!」 跳ね起きた衝撃が痺れる頭痛を増幅する。 ルイズは身を起こしたまま、今度は身体を「く」の字に追って悶絶した。 さておき――。 (そうだ、昨日は確か使い魔召喚の儀式があったはずだわ) 使い魔召喚の儀式は、メイジにとって一生その身に付き添う大切なパートナーを決める重要かつ神聖な儀式だ。 その儀式により、メイジは己の力量を如実に示す鏡の存在、使い魔を召喚する。 “メイジを見るならその使い魔を見ろ”と、そんな格言があるくらいだ。 従ってその儀式に失敗など許されるはずもなく、ルイズも細心の注意をもって儀式に望んだのだ。 (それて、ああ、その結果……どうなんだったっけ?) ズキズキと頭が痛んで、よく思い出せない。 なんだろう、頭に靄が掛かったようで――しかし、その靄の向こうに霞んで浮かぶシルエットがある。 二本の足があり、背はすらりとして高く、やはり二本の腕があり、少しくすんだような色合いの金色の髪があって、そうだ、確か腰に二本の剣を佩いた……人間。 ――人間? 「いやいや、そんな馬鹿なことってないわよ。いいい、いくら私がゼロのルイズだなんて馬鹿にされてるからって、流石に使い魔召喚の儀式で、にに、人間なんか呼び出しちゃうほどとぼけてないわよ、なな、ないわよ?」 あは、あははははは――と、乾いた笑い声を上げてルイズはまたベッドに突っ伏した。 「そうよ、ゆゆ、夢よ。夢を見たんだわ。だっておかしいじゃない、ありえないわ。かか、仮によ? 仮に私がまた、百歩譲って、ううん、千歩譲ってよ? それでまたなんか失敗なんかしちゃったりしたとしてもよ? 使い魔を召喚したなら、そうよ、コントラクトサーヴァントの儀式をした記憶があるはずじゃないの。でも違う、私そんなの覚えてないもの。 覚えてないってことは、つまりそんな事実はないってことなのよ。うん、完璧、完璧すぎる理論だわ」 柔らかな羽根枕に顔を埋めながらぶつぶつとそんなことを呟く。 その姿は傍目から見ると少し怖い。 「どうせ夢よ、夢のことだわ。もう一回寝たら忘れちゃうんだから。だから早く寝るのよルイズ。うう、頭痛いけど、でも寝るの。寝たらすっきりして変な夢のことなんて忘れてるんだから。だから寝るの、寝なさいルイズ」 人、それを現実逃避と言う――と別の次元で別の次元の使い魔が言ったような気がするが、そんなものは幻聴、そうよ、幻聴よ。 ルイズは必死でそんなことを自分に言い聞かせたが、再び彼女に睡魔がやって来ようとした頃には、既に朝食の時間が迫っていた。 ルイズは渋々身を起こし、着替えをする。 頭の鈍痛は結局引かなかったし、寝れなかったせいであの嫌な夢の記憶を忘れてしまうこともできなかった。 ――ドアを開ける。 「あら、ヴァリエール。頭大丈夫?」 自室から出るなり投げつけられたのは、不躾極まる一撃だった。 ルイズはこめかみを盛大に引きつらせて、声のした方を向く。 褐色の肌に持ち主の精神を形にしたかのような真っ赤な髪、そして、ルイズにはあり得ない豊かな乳房。 キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。 通称、“微熱”のキュルケ。 ゲルマニアからの留学生にして、ルイズの生家、ヴァリエール家と国境を挟んでお隣さんという因縁のある少女が、見事の谷間に柔らかく揺らしながらそこに佇んでいた。 ルイズはチッと舌打ちを一つ、 「朝からご挨拶ね、ツェルプストー。その喧嘩買ったわ」 そう言ってやれば、キュルケは心外とばかりに腕を組んで――タプンと谷間を波打たせながらルイズを睨み付ける。 忌々しい。 ただでさえこっちは朝から頭が痛いっていうのに、余計に頭が痛くなるようなものを見せつけるんじゃないわよ、ああ忌々しい。 「ご挨拶はそちらの方じゃないの。こっちが珍しく本心から心配してあげてるのに」 「フンッだ! お生憎様、こっちには貴女なんかに心配されることなんて、何一つ御座いませんわ」 「あら豪胆。前頭部陥没骨折でまだ痛みは残ってるでしょうに。治癒の術といっても怪我は癒せたってあんまり酷くちゃ痛みまでは消せないのよ? まぁ平気だって言うなら別に構わないんだけど」 流石は私のライバル、それでこそヴァリエールよ――なんてことをキュルケが思ったかどうかは定かではないが、ルイズとしては聞き逃せない単語が彼女の言葉には含まれていた。 「――え? なにそれ、前頭部陥没骨折って」 「なに言ってんの、あんたのおでこの怪我でしょ? 貴女が昨日召喚した平民と、まぁ不幸と言っていいタイミングでおでこぶつけ合っちゃってさ。 これで人格が入れ替わりとかすればそれこそコメディだけれど、まぁ鉢金(※)つけた頭にあれだけの頭突き食らえば陥没もするわよねぇ」 「な……」 思わず額に手を当てて仰け反る。 今朝から頭が痛かったのはそれか。 いや違う、問題はそこじゃない。 ――貴女が召喚した平民と―― つまりなんだ、その言葉の示す意味とはつまり――、 「……そう、あれは、夢じゃなかった、のね……」 がっくりと崩れ落ち、膝をついた。 夢なんかじゃなく、自分は本当に人間を、平民なんかを使い魔として呼び出してしまったのだ。 しかも契約さえ出来ていない。 ゼロのルイズ――大嫌いなあだ名が脳裏を過ぎった。 「ちょっとヴァリエール、大丈夫なの? まだ休んでた方がいいんじゃない?」 「なによ気持ち悪いわね、こんなときに優しくするなんてアンタらしくもない……」 「あのねぇ、私は確かにあんたのこと嫌いだけどね、だからって肉体的にも精神的にも弱ってる人間に追い討ち掛けるほど腐っちゃいないわよ。ホラ立ちなさい、服汚れるわよ?」 ルイズの腕をグィッと引っ張って立ち上がらせる。 しかしルイズは立ち上がっただけで、視線は床に落としたままだ。 ゼロのルイズ、魔法も使えない貴族失格のルイズ。 使い魔の契約に失敗するどころか、召喚の段階で失敗した出来損ないのルイズ。 使い魔召喚の儀式はトリステイン王立魔法学院では必修単位で、その神聖性からやり直し等は出来ない年に一回一発勝負の大儀式なのだ。 それに失敗したルイズに待ち受ける運命はと言えば、すなわち留年。 キュルケやギーシュ、モンモランシーにマリコルヌといったクラスの面々が進級していくのを傍目に見やりながら、自分は見下されて丸一年置き去りにされるのだ。 (――そ、そんな屈辱っ……!) 耐えられない。 耐えられるはずも無い。 そしてその報せは当然のように実家にも届くだろう。 意地悪な姉と優しい姉、厳しい両親。 魔法を操る才能のないルイズを様々な面から支えてくれた家族だ。 その家族を失望させないために頑張ってきたのに、 (がんばって、きたのに……っ!) ルイズの瞳から涙が零れた。 零れ落ちた涙は、床に触れるが染み込むこともなく、その涙の痕を残さない。 キュルケの背後からのっそりと現れた彼女の使い魔、サラマンダーが床に足が焼けない程度の微熱を与えていたのだ。 「……どうしたもんかしらねぇ」 彼女らしくもない聊か粗野な仕草で燃えるような赤髪をかき上げたキュルケは、ただ無言でその豊満な胸にルイズの小さな身体を抱きこんだ。 小さくてこまっしゃくれて魔法の一つもまともに使えない生意気なクラスメイト、国境を跨いだご近所さんのチビ姫さまのこんな姿――。 (そりゃあ折角同じ学院に通うことになったんだから、一度くらいは思い切り凹ませてやろうと思っていたのは確かだけれど――) こんな姿をこんな形で見る羽目になるとは思っていなかった。 そしてキュルケはそのまま、困ったような苦笑を浮かべてルイズをひとまず自分の部屋へ連れ帰ったのである。 ※補足→ビュウの額に巻いてるものはバンダナ説と鉢金説、或いは実は何も装備してない説があるらしいですぞ とりあえずここでは鉢金にて失礼
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/3468.html
前ページ次ページゼロと魔砲使い 翌日。 いつものように朝早く起きたなのはは、日課のトレーニングに行こうとして、ふと足を止めた。 ルイズが起きた時、そばにいないのはまずいのではないか。 いずれ彼女の起きる時間などが判れば、その辺の塩梅は何とかなるだろうが、初日から目の前にいないのはまずい。 思い直したなのはは、トレーニングはあきらめて、昨日の続きをすることにした。 ただのデータとは違い、こういうまったく未知の情報の処理はさすがにデバイス任せには出来ない。 単純に丸ごとコピーしておく記録はともかく、一度は自分の頭で咀嚼しておかないといけない。 ちなみに彼女がこうも必死になっているのは、後々帰れた時、こういったことをすべて報告書として上層部に提出しなければならないからである。 何しろ完全に未知の次元世界との初接触である。責任は重い。まあ、個人的な興味もあることはあるが。 そうして自分なりに整理したデータの打ち込みを続けていると、やがてルイズが目を覚ました。 ハンディパソコンをしまい、ベッドの脇に侍る。 「おはようございます、ご主人様」 掛けられた声に、一瞬ルイズはびっくりしたようだが、昨日自分が使い魔として自分――なのはを召喚したことを思い出したようだった。 服を着替えさせろという要求にも、なのはは素直に従った。 高位の貴族は自分に出来ることでもあえて使用人にやらせるということをさすがになのはも知っていたからだ。 雇用政策の一環として。 ルイズの方も、実際のところ、ごく普通に実家のメイドに命令するような口調になっていた。 年格好や雰囲気が近いせいもあっただろう。 その後の洗濯も、なのはが素直に了承したため、なんのトラブルも起きなかった。 なのはが同性の年長だということも大きかっただろう。 とりあえず洗濯物をまとめたあと、洗濯場のおおよその位置をルイズに聞き、なのはは現地へと向かう。 途中で同じような荷物を抱えたメイドらしき少女に出会った。 「あ、すみません、洗濯物の洗い場はこちらでいいんですか?」 見知らぬ女性に声を掛けられたメイドは、一瞬とまどったものの、その姿が昨日の夜、まかないの夕食をもらいに来た女性のものであると気がついた。 「あ、確か、タカマチナノハさんでしたよね。ミス・ヴァリエール様の使い魔になった」 「はい、そうです。なのは、とお呼びください」 「あ、はい、こちらこそ。私はシエスタと申します」 何となく意気投合した二人は、仲良く洗濯場で洗い物をすることになった。 洗濯板相手に二人で格闘する。 「こういう上質の布地は洗うのに神経使いますね」 「洗剤のない洗濯がこれほど大変だとは思わなかったなあ」 「洗剤? なんですか?」 「あ~、洗濯用の石鹸なんだけど……」 「石鹸って、アレですか? 貴族の方がお風呂で体洗うのに使う」 「あ、あるんだ、石鹸」 その時、ふとあることに気がついて、なのはは洗っていた下着を見た。ルイズのパンツだ。 自分たちが履いているものと変わりばえしなかったのでつい見過ごしていたが、こうして隣でシエスタが洗っているものと見比べると、明らかな違いがある。 こちらのにはゴムが入っていた。シエスタが洗っている下着は紐だ。デザインも違う。 (アレかなあ、石鹸もこのゴムも、貴族が魔法で作っているのかな) だとしたら貴族が力を持っているのも、そして6000年も工業化が起こらずに来ている理由も何となく納得できた。 (なんか妙に便利すぎ、っていうか、魔法はともかく、その背景にある知識が変にアンバランスだわ) 秘薬なるものも存在しているから、案外化学水準などは工業化されていないだけで意外と高いのかも、と、なのはは思った。 洗濯物を二人で干した後は朝食である。昨日の夕食時に二人して気がついたのだが、ルイズもさすがに年上の女性を犬猫同然に扱うわけには行かず、かといって同席させるわけにも行かなかったので、下働きのまかないを分けてもらおうということにしたのだ。 ついでに、なのははシエスタらメイド達に頼んで、貴族に対する給仕のやり方を教えてもらうことにした。 この先出かけた時など、ルイズの世話は必然的に自分の仕事になる。そう思ってのことだった。 幸い、なのはには実家の翠屋でのアルバイト経験があった。 学院での給仕も、厳密な作法があるわけではないので、なのはにも勤まりそうであった。 ものはついでと、予備のメイド服から自分にあったサイズのものを貸してもらう。 着替えがなかったので、なのはとしてもむしろありがたかった。 着替えた際、シエスタをはじめとするメイドの女性達が、自分の下着をやけに興味津々の目つきで見ていたのが気になったが、そこはとりあえず考えないことにする。 後で調べないといけないな、とは思ったが。妙齢の女性にとって替えの下着の確保は重大なことなのだ。 先ほどの洗濯で考えたこともある。 ルイズは自分の使い魔がメイド姿で給仕をしているのには驚いたが、『後々のための勉強です』と耳打ちされ、なんだか顔がほてってしまった。 喜びと照れくささの入り交じった、不可解だが悪くはない気持ちだった。 朝食が終わると授業である。教室は石造りの大学のような感じであった。 大きな階段状の部屋で、一番下に教壇がある。その後ろにある黒板を見て、なのはは思わずめまいがした。 「ん? どうかした?」 「いえ、ちょっと」 なのはは聖祥小学校時代、社会科の授業でのことを思い出していた。課題授業で、『身近なものの歴史をしらべる』というものだった。なのはがその時アリサ達と一緒の班で調べたのは、文房具であった。 鉛筆や消しゴム、黒板やチョーク、定規といったものの歴史を調べて、みんなの前で発表した。まさかその時の知識がこうも生きてくるとは予想もしていなかった。 黒板やチョークが出来たのは、地球では19世紀である。パンツのゴム紐とかもだ。産業革命以降、爆発的に科学や技術が進歩していく中での事である。 (社会背景は17世紀くらいっぽいのに、日用品は19世紀くらいかあ。この差を、魔法が埋めてるのかな? 化学とかの参考書、見せてもらった方がいいかなあ) そう思うと、これからの授業にも俄然興味がわいてきた。 「……ずいぶん熱心そうね」 ルイズは舞い上がっている年上の使い魔を見て、そっとため息をついた。 ルイズと一緒に教室に入った時、なのはは態度にこそ出さなかったものの、心底びっくりした。 教室内が見たこともない動物たちのオンパレードだったからだ。 猛獣のたぐいならまだしも、目玉のお化けだの下半身が蛇になっている狼だの、ゲームの中にしか出てこないような異様な魔物がわんさかいたのだ。 そういうのがいるらしいことは昨日の夜の質問で理解していたが、見ると聞くとは大違いである。 ただ、今が授業の前であることを考えて、具体的な質問をすることは遠慮するなのはであった。 そうこうしているうちにルイズはいつもの席に座る。なのはも隣に座ると、机の下で何か妙なものを広げはじめた。 「なにそれ?」 ルイズが聞くと、なのはは手を止めて答える。 「あ、これ、魔法のこととかを調べるためのものです。こっちでいうとマジックアイテムみたいなものだと思えば近いかと。ほとんど魔法は使ってないんですけど」 ちなみに魔法を使っているのは辺境調査時のための個人魔力による充電システムだけである。 「ふーん、ま、授業の邪魔にならなければいいわ。物音とか立てないでね」 「はい」 どうやらよく判らなかったようでスルーしたらしい。と、その時。 「あら、ミス・ヴァリエール。寂しくなって実家からメイドさん連れてきたの?」 妙に妖艶な女性の声がした。なのはが振り向くと、そこには声に違わぬ妖艶な女性が大きなトカゲとサンショウウオの合いの子みたいな生物を引きつれて座っていてた。 「キュルケ!」 ルイズの声が尖る。 「これは私の使い魔よ。メイドじゃないわ!」 「そう言われてもねぇ」 なのはの服装は朝のメイド服のままだ。 「ちなみに私の使い魔はこれ。さ、ご挨拶しなさい、フレイム」 先ほどのトカゲが丁寧に頭を下げる。よく見るとしっぽのあたりに炎が揺れていた。 なのはも釣られて何となく頭を下げる。 「なのは、いちいち頭下げなくてもいいわよ、ツェルプストーの使い魔なんかに」 「っていわれましても……」 とりあえずなのはは黙ることにした。ついでにどうやらご主人様のライバルらしい女性の方に目を向ける。 褐色の肌をした、実にプロポーションのよい女性であった。男性なら目を離せなくなりそうな胸が大きな存在感を放っている。 それを見た時、なのはは親友でもある上司のことを思い出していた。 彼女は女性の胸を揉むのが大好きなのだ。女性でありながら。 ふと、彼女たちのことを思い出した時、レイジングハートから警告が来た。 (“マスター、警告します。例の使い魔契約の術式より、心理抑制の反応あり。遮断しました”) (……そう。あり得るわね。記録だけして、以後も自動ブロックして) (“了解”) ありそうな話だ、と、なのははその魔法の非人道性については流した。使い魔の存在意義を考えれば当たり前のことだ。 この術式が主に対する絶対的忠誠心を埋め込まないだけましとすべし、と、考えることにする。 この術はそれこそ6000年前から伝わるような代物なのだから。 (ヴィヴィオ、お母さん、しばらくお家に帰れなさそう。ごめんね) そして、おそらく今頃半狂乱になっていそうな義理の娘と金髪の親友をなのはは思う。 親友が別の事件解決直後で非番だったのは幸いだ。 自分が行方知れずになったと聞いたら、その捜索に全力を尽くすと同時に、ヴィヴィオのもう一人の親にもなってくれる。 (さ、感傷はここまで。今のわたしは、自分に出来ることをしないとね) なのはは意識を、先ほどからしょうもない口げんかをしているご主人様の方に戻した。 たわいもないやり取りを聞いていると、どうやら相手の方が一枚上手というか、余裕があるようである。 ご主人様は彼女のことを毛嫌いしているが、キュルケというらしい女性の方は、ライバルであると同時にいじりがいのある妹みたいな目でご主人様を見ているのがありありと判る。少なくとも嫌ってはいない。 後で愚痴を聞いた方がいいかも、と、内心なのはは思った。 丁度その時、教師と思われる女性がやってきて、二人のいがみ合いも自然に収まった。 「みなさん、春の使い魔召喚は大成功のようですね」 紫色のローブを纏った、ふくよかな中年女性が生徒達に声を掛ける。 と、ルイズがうつむいたのを見て、なのはの顔が少し曇った。 「ご主人様」 なのははルイズに声を掛ける。意図的に、心細げな細い声にして言葉を続ける。 「私では……不満ですか? 不足ですか?」 「っ! そ」 怒鳴りそうになったルイズの口をすかざすふさぐなのは。そのままにっこり満面の笑みを浮かべ、 「授業中ですよ」 とだけ言って主を解放する。 再び前を見るルイズの表情には、生来の負けん気が戻っていた。 と、それを見計らったかのように、壇上の教師の声がルイズとなのはの上に落ちてきた。 「まあ、とっても変わった使い魔を召喚した方もいるのですね」 聞きようによっては侮蔑であるが、彼女から発せられる雰囲気にはそんなところはなかった。 むしろ、よく主人を支えてくれる、いい使い魔を引き当てたみたいですね、というニュアンスを纏っていた。 だが、やはりそういう空気を読めない輩というものはいるようで、すかさず今度は間違いなく侮蔑を含んだ合いの手が飛んできた。 「ゼロのルイズ! 召喚できないからって、実家からメイド呼んでくるなよ!」 だがルイズはあわてなかった。そう。先ほどのやり取りで、ルイズは理解していた。 ここで自分が怒ったりあわてたりしたら、それは自分の使い魔を蔑むことになる。そして、ひいてはそれを召喚した自分をも。 「あら、残念だけど、彼女は実家のメイドじゃなくて私の使い魔なの。メイドみたいに引き抜くのは無理よ、マリコルヌ」 「な……!」 マリコルヌと呼ばれた少年は絶句していた。 「ま、見ての通りの美人さんだからあなたが興味を持つのは判るけど、人の使い魔にそういう目を向けるのは問題ではなくて? 風上のマリコルヌ」 と、おやおやという目でルイズとマリコルヌを見ていたなのはの耳に、反対側の席から小さなつぶやきが聞こえてきた。 「あら、ルイズにしては見事な切り返しね」 「でも詰めが甘い。50点」 どうやら先ほどのキュルケという女生徒が、そのさらに隣にいた人物と話しているらしい。 「う、うるさい! 使い魔に負けてるくせに!」 「なんですって! どこがよ!」 せっかくつかみ取った優勢が、瞬時に泥仕合に落ちていた。 「少なくとも胸で負けてる!」 「うっさいわね! この風邪っぴき!」 「僕は風上だ! 『ゼロ』のルイズ!」 その瞬間教室が爆笑に包まれた。生徒の大半の視線が、ルイズの胸に向いている。 なのはは一人視線をそらす。と、その視界に一人の少女が映った。さっきキュルケと話していたと思われる、彼女の反対側に座る少女だ。 その青髪に眼鏡の少女は、ほかのみんながルイズを見つめる中、一人自分の胸元を見つめていた。 なのはは礼儀正しく、自分も下を見た。 この混乱は、ルイズをはじめとする主要な人物の口に赤土の粘土が張り付いて強制的に黙らされたことにより、無理矢理収められた。 ルイズは口に粘土を貼り付けたまま、授業に集中している。 なのはも一緒に授業に集中していた。 内容は大変におもしろいものであった。プライドが高いのか、やや自分の使う土がいかに大切かを持ち上げるところはあったものの、土の属性、特に『練金』の魔法がどれだけ深く生活に密着しているかは、はしりを聞いただけでも理解できた。 彼女が何度か魔法を使った時の記録も、レイジングハートがスキャナを使ってばっちり記録していた。 そんな授業の半ばで。 「では、実際にやってもらいましょう。そうですね、ミス・ヴァリエール」 そのとたん、教室内の雰囲気が一変した。 「ミセス・シェヴルーズ!」 「やめてください! 危険です!」 「先生は一年時、ルイズを教えていませんよね!」 怒号のような叫びがあちこちから上がる。 訝しがる中、ルイズは怒りで顔を真っ赤に染めて立ち上がった。口から粘土を引っぺがしつつ叫ぶ。 「やります!」 そう答えると、杖を片手に、のしのしという擬音がぴったり当てはまるような歩き方で下りていった。 その様子にきょとんとするなのは。そんな彼女に、キュルケが声を掛けてきた。 「ね、使い魔さん」 「あ、なんでしょうか。あと、わたしのことはなのはとお呼びください」 キュルケは小さく頷いた。 「ではなのは、改めて言うけど、危険よ。机の下に隠れていた方がいいわ」 ふと見ると、前の方の席の生徒達が皆机の下に隠れている。 「いったい何故……」 「忠告はしたわよ。さ、フレイム」 そういうと同時に、彼女もそそくさと机の下に隠れてしまった。 「なんなんだろう……」 なのはは再び視線をご主人様の方に戻す。彼女は教壇の前で、石ころを前に、先ほど習った呪文を一心に唱えていた。 (“マスター、異常です”) そこにレイジングハートからの念話が割り込んできた。 (異常?) (“イエス。今まで記録したものとは、まったく異なる魔力の流れが生じています”) (それって、彼女の魔法?) (“はい。詳しく説明している時間はありませんが、このままだと”) (このままだと?) (“物質崩壊による爆発が生じます”) (え……) 平たく言うと核爆発である。なのはが思わず冷や汗を垂らした瞬間、 カッ! (“Protection”) 閃光とともに教室内に爆風が渦巻いた。 「ご主人様!」 防御魔法で爆風をやり過ごしたなのはは、あわてて壇を駆け下りていく。 思ったより威力はなかったが、危険度は極めて高い現象である。 (“放射能その他の異常は感知されません”) 実際、爆風が収まると、そこには衣服の一部が破れたルイズと、目を回しているシュヴルーズがいた。 二人とも目立つ外傷はないようである。 (“エネルギーの大半は魔力に還元された模様です”) (……どういう失敗よ、それ) ミッド式やベルカ式ではやろうと思っても出来ない事である。物質の魔力変換というのは。 それよりも今は、ルイズの無事を確認する方が先である。 「大丈夫ですか!」 そう叫ぶなのはに、ルイズは言った。 「ちょっと失敗しちゃったみたいね」 「「「どこがだ!」」」 机の下から頭を出した生徒達から、一斉にツッコミが入る。 「いつもいつも、成功率ゼロのくせに!」 そんな中なのはは、黙ってマントの前を止め、破けた服を見えないようにした。 「相変わらずね、ルイズは」 ほこりをはたきながら、キュルケはまわりを見る。と、その視界に意外なものが入ってきた。 ある意味見慣れたものではある。隣に座っていた親友だ。彼女の顔は、何故かモードが切り替わっていた。 ごくまれに見かける、何かに注目する顔。 普段の彼女の顔は、読書時以外は『無関心』という札が貼られていることが多いというのに。 「どうしたの、タバサ」 「見間違いじゃなければ」 その視線は、ルイズと使い魔の女性……なのはの方を向いている。 「彼女、魔法を使った」 キュルケも思わず、なのはのことを注目していた。 前ページ次ページゼロと魔砲使い
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5347.html
前ページ次ページゼロの社長 「宇宙の果てのどこかにいる,私の僕よ!神聖で美しく、そして強力な使い魔よ!私は心より訴えるわ、我が導きに答えなさい!」 ここ、トリステイン魔法学院では、今日は2年生の使い魔召喚の儀式を行っていた。 2年生達はここで、一生の僕であり、友であり、目で耳である使い魔を次々と召喚していった。 たった一人の例外を除いて。 その例外こそが「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」 先ほどの呪文を唱えたトリステイン魔法学院の2年生であり、 そしてこの儀式を行っている中庭を爆発で穴だらけにしている張本人である。 もっとも、彼女自身が起こそうとして爆発を起こしているわけではない。 彼女はなぜか,全ての魔法を発動させようとするたびに失敗し、代わりに爆発を起こしてしまうのである。 故に“ゼロのルイズ”という不名誉なあだ名までついている始末である。 魔法成功率ゼロ、そしてゼロの記録更新はこの使い魔召喚の儀式でも,続いていた。 「ミス・ヴァリエール、そろそろ時間がありません。次で最後としましょう。」 爆発続きで体力も減ってきたのか,肩で息をしているルイズに声をかけたのは、 学院の教師でありこの儀式の監督者でもあるジャン・コルベールだった。 そもそもこれで35回目の失敗であり、コルベールは他の生徒には教室に戻り自習するようにと伝えていた。 この場に残っているのはコルベールのほかに、からかい半分で見ている ルイズのクラスメイトのキュルケとその親友のタバサのみであった。 もう日も暮れ始め、いつまでも成功する見込みのないルイズにはかわいそうだとは思うが、 いつまでもこれを続けているわけにも行かない。 彼女の努力は知っているが,こればかりは結果を出せなければどうにもならない。 コルベールはそう思い、苦渋の思いでルイズに終了を告げた。 「わかりました、これが…最後です。」 ルイズはそう言うとその最後の1回に全てをかけるかのように目を瞑り、意識を集中させ、もう一度呪文を唱えた。 「宇宙の果てのどこかにいる,私の僕よ!」 (お願い…これが最後のチャンスなの!) 「強靭で!最強で!そして無敵の使い魔よ!」 (私はゼロなんかじゃない!だから,その証のために…) 「私は心より訴えるわ、我が導きに答えなさい!」 そして,やはり起こる先ほどまでと変わらない爆発。 目を伏せ,首を振るコルベール。 からかうつもりが,流石に不憫になったのか同情するような目で見るキュルケ。 しかし、タバサだけはルイズの少し前方、爆発のあった付近へ視点がずれていた。 煙の中に,うっすらと影が見えたのである。 (成功したっ!?しかもキュルケのサラマンダーなんかよりずっと大きい!) しかし、その煙の中から現れたのは、青年であった。 長身の体躯、マントのように腰まで長いコート、腕には鉄板を貼り付けたような見たことの無い腕輪。 そして何より精悍な顔つき。 (これが…私の使い魔?) ルイズがそう思うのも無理は無い。今まで召喚されてきた使い魔たちは皆、かえるやらモグラやら,とりあえず動物だったのだ。 いや、むしろ,人間の使い魔なんて見たことも聞いたことも無い。 「ぬぅ…一体何事だ…?貴様らは一体何者だ?」 ルイズが、いや、ルイズを含む4人が思考をめぐらせている時、先に声をかけてきたのは青年のほうだった。 「……ミスタコルベール。召喚のやり直しを求めます。」 「ダメです。」 コルベールはこう続けた。 「ミス・ヴァリエール。召喚の儀式はメイジとして一生を決める神聖な物なのです。 やり直すなど,この儀式に対する冒涜です。 君が好むと好まざると,君が召喚した以上、彼は君の使い魔と決まったのです。 断固として,やり直しは認められません。」 断固として認められなかった。 あきらめたのか、ルイズは青年に近づき 「おい,召喚だなんだと,何を訳のわからないことを…」 「あんた、感謝しなさいよね!貴族にこんな事されるなんて、ありえないことなんだから!」 と、いいつつ、コントラクトサーヴァントの口付けをしようと試みるが… 届かない。 当然である。 ルイズの身長は153サントに対して目の前の青年は少なくとも185サントはある。 背が届かないのである。 コホン、咳払いをして、コルベールがレビテーションの魔法をかけ,強引に契約は完了した。 「ぬっ!貴様何を…ぬあっ!何だこれは?」 青年の左手に契約のルーンが刻まれる。その痛みに青年は顔を苦痛にゆがませる。 「それは契約のルーン、あんたは私の使い魔として契約されたの。」 「使い魔の契約だとっ!?ぐおっ!」 (珍しい形のルーンだな…後で調べておかなくては) コルベールは青年の手のルーンをすばやく書き写した。 「それで…あんた名前は?」 「ふん、他人に名を聞くときは、先に名乗るものだと習わなかったのか?礼儀を知らない小娘が。」 苦痛に顔をゆがませながらも、皮肉を返す青年。 ふぅ,とため息をつきながらルイズは答えた。 「私はルイズ。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 このトリステイン魔法学院の生徒であり、あなたのご主人様よ。」 と,ルイズが無い胸を張りながら青年に向かって答えた。 「さて,あんたの名前は?」 相手の皮肉に冷静さをもって返したルイズ。相手もこれでは答えざるを得ない。 「俺の名は…海馬瀬人。海馬コーポレーション社長にして最強のデュエリスト、海馬瀬人だ。」 前ページ次ページゼロの社長
https://w.atwiki.jp/ws_wiki/pages/602.html
autolink() ZM/W03-065 カード名:ウェディングドレスのルイズ カテゴリ:キャラクター 色:赤 レベル:1 コスト:1 トリガー:1 パワー:5000 ソウル:1 特徴:《魔法》?・《虚無》? 【自】[①]このカードがアタックした時、クライマックス置場に「ご褒美」があるなら、あなたはコストを払ってよい。そうしたら、自分の控え室のキャラを1枚選び、手札に戻す。 【自】アンコール[手札のキャラを1枚控え室に置く](このカードが舞台から控え室に置かれた時、あなたはコストを払ってよい。そうしたら、このカードがいた枠にレストして置く) …主人と使い魔ってだけじゃなくてもっと確かな絆が欲しいの レアリティ:C illust.ヤマグチノボル・メディアファクトリー/ゼロの使い魔製作委員会 ゼロの使い魔版ゴキゲンな由夢。 ただし、こちらの方は対応CXが回収トリガーであり、レアリティもCで断然入手し易いとかなり便利になっている。 手札アンコール+CXシナジーによる回収の便利さは直枝 理樹等でも証明済み。 また基本サイズもそこそこあり、「ルイズ」?ネームに関するサポートもあるので、アンコール持ち中堅キャラとして単独でもそれなりに戦えるスペックを持つ。 更にサイト&デルフリンガーによりサイズアップが可能であり、そちらのカードも0コストで場に出せたりカウンターに使ったりできる為、バトルに関してはこれまでのレベル1回収系能力持ちの中でも強い方と言える。 ・対応クライマックス カード名 トリガー ご褒美 扉 ・関連カード カード名 レベル/コスト スペック 色 備考 サイト&デルフリンガー 1/0 1000/1/0 赤 ・関連ページ 「ルイズ」?
https://w.atwiki.jp/nolnol/pages/4957.html
陰陽師 攻撃術 式神召喚・参 目録 召喚術・伍 必要気合 1120 必要アイテム 呪符 ウェイト 2 効果時間 式神が倒れるまで 発動準備 なし 使用場所 戦闘専用 効果 ランク3の式神を召喚し、ともに戦わせる。 特徴 憑依攻撃(敵単体に若干ダメージと確実に呪い。ウェイト?) 憑依回復(召喚者を回復。ウェイト?) 憑依付与(召喚者にランダムで付与。ウェイト?)が使える 敵の攻撃の対象になる その他情報 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5442.html
前ページ次ページゼロの社長 「きゃあああああああああああああああああ」 ルイズの悲鳴が学生寮中に広がった。 それもそうだろう、爆音とともに巨大なドラゴンが自分の部屋に出現し、あまつさえ窓を突き破り部屋の調度品もへし曲げた上に 床も抜けそうになっていれば悲鳴の一つもあげよう。 最も、そのドラゴン自身は、命令はまだかとただその体勢を維持し、ぴくりとも動かない。 そして、そのドラゴンを呼び出した張本人も、これまた自分の思考の世界に入ってしまっていた。 (ぬぅ、まさかとは思ったが「本当に」召喚されるとは…。 デュエルモンスターの世界でもデュエルディスクを通してカードからモンスターを召喚する事ができたが、この世界でもそれは同様ということか。 そうなると問題はこれがどういう『ルール』の上で召喚を可能にしているかを知っておかなければならないが…) 一通り考えた末、海馬は一言、こう呟いた。 「ふむ…やはりこうなったか。」 「なにがやはりこうなったかよ!この馬鹿-!!!」 間髪いれずにどこから取り出したのか鞭を手に持ち突っ込みを入れてくるルイズ。 「なに?それじゃあこうなるかもって予想していながらあんなドラゴンを呼び出したの!? どうするのよ!部屋の中でこんなもの出しちゃって!っていうか、私の部屋がボロボロにー!! 窓なんか突き破ってるし!どうするのよ!?」 怒りと混乱とその他もろもろの感情の激流でパニックになっているルイズをよそに、当の海馬はといえばどこ吹く風。 サファイアドラゴンの尻尾をぺたぺた触ったりしている。 「ふむ、やはりこの世界ではモンスターを実体化させられるようだな。異世界に行った時にも起こった現象だが、 なるほど、この世界もまた俺の世界とデュエルモンスターズの世界、どちらかとの縁があるのだろう。」 「ふむじゃないでしょう!こんなの見られたらどうするのよ!ゼロのルイズがまたなんか起こしたって言われちゃうじゃない!」 「安心しろ、これでお前の使い魔はモンスターを召喚する事ができるというほかには無い特別な使い魔だと証明されたぞ。」 特別な…という響きに一瞬魅力を感じるものの、実際にこの部屋の被害状況を目にすると、どちらが問題かは一目瞭然であった。 「とにかく、早くそのドラゴンどっかにやって!こんな事している間に誰かが来たら…」 ドンドン と、言っているそばからノック…というより扉を殴打する音が聞こえてきた。 「ちょっとルイズ!?あんた部屋で魔法使うのはやめろって前に言ったでしょう!って言うか何時だと思ってるの!ちょっとあけなさい!」 扉の向こうからキュルケの声がする。 夜にもかかわらず爆音と悲鳴とが響けばそりゃ誰でも目を醒ますだろう。 しかも扉の向こうからはがやがやと、一人ではない複数の声が聞こえてくる。 「ちょっ!ちょっと待って今開けちゃ駄目!絶対駄目!」 「何言ってるの!あんな爆音鳴り響かせて!どうせまた魔法を失敗したんでしょ!とにかく開けるわよ!」 ガチャガチャと外側から開けようとするキュルケと内側から開けさせまいとするルイズ。 「セッ…セト!早くソイツ何とかしなさい!出したなら戻し方もわかるでしょ!早く!」 自分達は召喚した使い魔を戻せないのにどうしてそんな発想ができるとも思ったものだが、海馬は少し考え… 「サファイアドラゴン!その窓をブチ破り外へ飛び出せ!」 などととんでもない命令をした。 「ちょっとセト!なにいってうわぁ!?」 ドラゴンが勢いよく飛び立ち窓を突き破って外に飛び出すのと、 キュルケがサラマンダーに体重をかけさせ強引に扉を開けたのと、 ルイズがその反動で吹っ飛ばされて転がったのはほぼ同時だった。 そしてサファイアドラゴンが空を飛び回りある程度の距離を取ったところで、海馬はデュエルディスクからカードを引き抜く。 同時にサファイアドラゴンは光の粒子になり消滅した。 「ちょっと…なんなのあのドラゴン?みたことないわよ?ルイズ、一体何があったわけ?」 キュルケは吹っ飛んでいたルイズに近寄り肩を揺さぶる。 だがルイズは転がった際にどこかぶつけたのか、「きゅ~…」などといいながら目を回している。 「あのドラゴンがいきなりこの部屋に突っ込んできたのだ。そこの窓を突き破ってな。」 目を回しているルイズの代わりに、海馬が答えた。 もちろん嘘である。しかし、もともとは海馬の責任である。 ルイズに責が被らないように、正体不明のドラゴンの襲来という形にしたのである。 「何とか怪我はせずにすんだが、ルイズはあのありさまで、部屋もこんな形になってしまった。困ったものだ。」 アンタがな、と一部始終を見ていたものがいたなら即突込みを入れるであろう。 だが今その一部始終を見ていたルイズは気絶しているし、ドラゴン自体も姿を消した。 故に海馬の言葉を否定する材料は何も無い。 ましてや、ただの平民(と、思われる)このルイズの使い魔がドラゴンを召喚したなどとは誰も思わないだろう。 「部屋の修理は明日依頼するとして、とりあえずルイズを医務室に連れて行かなければな。外傷は見られないが、念のためだ。」 そう言うと海馬はキュルケを遮り、ルイズをかかえて部屋から出て行こうとする。 「と、言うわけだ。騒がせたな。ところで…できれば医務室の場所を教えて欲しいのだが?」 「あ…えっと、それなら私が」 なぜかボーっとしていたキュルケが急に我に返り、海馬とともに医務室へと向かっていく。 そして集まっていた生徒達は、海馬の説明に微妙に納得しない顔をしながらも、自分達の部屋へと帰っていった。 螺旋階段を下りながら、キュルケは考えていた。 (このトリステイン魔法学院にドラゴンが強襲? ありえないわ…ましてあのドラゴンは今まで見たことも無いような姿だった。 そして、ドラゴンに何かを叫んでいたこの使い魔…。ちゃんと聞こえなかったけれどおそらくあのドラゴンに出て行くように命令したんだろう。 命令した。 つまり、あのドラゴンは彼の命令を聞いたとするなら、あのドラゴンは彼が… 馬鹿な!ただの平民(のはず)がドラゴンを召喚するなんて! しかしそれならなぜルイズの部屋で? あーもうわけわかんない!) 「で、この先はどっちだ?」 頭の中をごちゃごちゃにしながら考えていたため、海馬に声をかけられていたことに気づかなかった。 「え、あ、えーっと…」 「何か考え事をしていたようだが、今は道案内に集中して欲しいものだが。」 「あ、ええ、ごめんなさい、えっと…」 「海馬瀬人だ。名乗っていなかったな。」 「カイバセト…私はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。 あなたのご主人様のクラスメイト。よろしく。」 「ツェルプストー…そういえばルイズが口にしていた名だ。 …そうか、貴様の事だったのか。ルイズに召喚されたとき、あの場にもいたな。」 「えぇ、驚いたわよ。使い魔召喚の儀式で人間が現れるなんてびっくり。」 「俺も驚いた側だ。気づいたら見知らぬ場所にいたのだからな。」 他愛の無い会話。だがキュルケからすれば少しの安堵が生まれた。 (なんだ、話してみればそんなに異常な男でもなかったか。 変に考えてこんでた自分が馬鹿みたい。それに…結構いい男) 「ねぇ、ルイズって私の事何か言ってたでしょう?」 「ふむ…悪口というわけではないが、貴様の事を例にだすことが幾度かあったような気がするな。」 「私はこのトリステインじゃなく、隣国のゲルマニアの人間なの。 そしてルイズの家の領地と私の家領地は国境を境にすぐ近くなのよ。で、先祖代々…まぁいろいろあって犬猿の仲なのよ。」 「ほう…それでルイズは貴様をライバル視しているというわけか。」 「そゆこと。さて、医務室についたわよ。」 事情を説明し、ルイズをベッドに寝かせて海馬とキュルケは医務室を後にした。 「では、俺はこれで。ここまでの案内、感謝するぞ。」 「って、あなたはどうするのよ?ルイズの部屋に戻る気?」 「いや、少し気になることがある。少し散策して、朝には戻る。」 「あら、そう?」 「ではな、ルイズが世話になった。」 話も聞かず学生寮から離れていく海馬。 「なんていうか、変わった使い魔を召喚したものね。ルイズは。」 前ページ次ページゼロの社長
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2690.html
トリステイン魔法学院で二年生による春の召喚の儀式が行われていた。 順調に進んでいく中、一人の生徒だけが召喚を失敗し続けていた。 十数回後、ついに召喚の手ごたえを感じる。 その生徒は爆煙の向こうに、何が呼び出されたのか、その小さな胸を期待に膨らませた。 あたし、ずっと探し回ってたの。 ずっとずっとずーーーっとママを探してたの。 怖い人たちとか、いっぱい居たんだけど頑張って探したの。 怖い事とか痛いことも沢山されたわ。 だけど、めげちゃ駄目でしょ? だから頑張ったの。 それでね、やっと見つけたの!! ママ!!!ああ、ママ!!! かわいそうにこんな所に閉じ込められて!!! でも今あたしが出してあげるから! ママ!!やっと合えたわママ!! それでね、ママを手に持って逃げようとしたんだけど、怖い人が居たから逃げられないかと思ったの。 だから、怖かったけど、崖の下に飛び降りる事にしたの。 だって、怖い人に捕まるよりいいでしょ? だから飛び降りたの。 えいっ、て。 そうしたら、落ちてく先におっきな鏡があったの。 それでね、気が付いたら原っぱに立ってたの。 ビックリしたわ、周りに変な人たちがたっくさん居るし、眩しかったから。 けど大丈夫、だってあたしはママと一緒だもん! ねえママ。 ママがいるから、あたし安心なの…ママ… あたりは嘲笑でざわついていた。 その嘲笑は召喚を行った者と、召喚された物に向けられていた。 「見ろよ!ゼロのルイズが平民を召喚したぜ!」 「ああ、しかもバアさんか?こりゃ」 「やっぱりゼロはゼロだよな!」 ゼロと呼ばれた生徒、ルイズ・フランソワーズは怒りと悔しさと悲しさで肩を震わせていた。 召喚された者は、平民、しかも頭巾を被った老婆に見えた。 薄汚れてボロボロに成った半そでのシャツと、ロングスカートを着ており、そこから見える手足もいい加減汚れており傷だらけだ。 背中が曲がっており、両腕をだらんと前に垂らしている。 無気力に垂れ下がった両手には、乳白色の球形の物を持っていた。 そのさまは、どう見ても、ドラゴンやグリフィン、サラマンダーの様な高等な使い魔には見えない。 召喚された事に戸惑っているのか、オシなのか、黙ったまま立ち尽くしている。 何を考えているのか、その顔色は頭全体を覆うような頭巾によって隠されていて伺うことが出来なかった。 「ミスタ・コルベール!!召喚のやり直しをさせてください!!」 「だめだ」 コルベールは光る頭を振った。 「召喚の儀式は神聖な物だ…やり直しは許可できない」 「……」 ルイズもそれは判っていた。 召喚のやり直しをする為には、召喚された者が死ななければ成らないのだ。 気に入らないからといって殺すわけには行かない。 ルイズは腹を決めることにした。 その老婆のような者の方へ近づいていく。 「ねえ、そこのあなた…名前は?」 返事がない。 「ちょっと!平民が貴族の質問を無視する気?!」 やはり返事がない。 周りから、ゼロだから平民からも馬鹿にされている、等と言う嘲笑が聞こえる。 血圧が上がって行くのを感じたルイズだが、同時にその老婆の異変に気が付いた。 持っているものが重いために、背中を曲げて両腕を前に垂らしているのかと思ったが、そうではない。 手かせを…それも普通の護送用ではなく、かなり頑丈な手かせを嵌められているから、両手を前に垂らさざるを得ないのだ。 良く見ると、くるぶしにも足かせの一部が付いている。 つまり、罪人を召喚してしまったんだろうか? 「ねえ……何とか言いなさいよ」 ……… もしかして聞こえてない? それとも、召喚された生き物はしばらく大人しくしているけど、人間も大人しくなるのかしら? 反応を見ようにも、ほぼ頭全体が頭巾によって覆われているので、顔が見えない。 邪魔ね…剥ぎ取っちゃおうかしら? そう考えて近づいて行ったルイズは、老婆の様な者から1メイル半ほどの距離で固まってしまった。 「どうしたのかね?早くコントラクト・サーヴァントを済ませなさい」 急かすコルベール。 だがルイズは動かない。 不審に思ったコルベールがルイズに近づく。 「さあ早くし「ミスタコルベール!!」…何かね?」 話を途中でさえぎられ、少しムッとしたコルベール。 「こ、こここ、この者が被っているずずず頭巾って!!」 「その者の頭巾がどうかしたの…か……!!!ま…まさか!これは!!」 周囲の生徒たちは、二人が何故薄汚れたボロ頭巾の事を話しているのか判らなかった。 「こここここれって…そそそのこれはひ「そんな事はない!!」…」 コルベールが叫ぶ。 「そんな事があるはずないじゃないか?!これはサルの皮だ!サルだよ!!そうに違いない!!」 「そ、そうですか?」 「そうだよ!サルの顔の皮を張り合わせているだけだ!そういう頭巾だってあるだろう!さっさと契約を済ませたまえ!!二年生に進級したいのでしょう!!」 「はいぃ!」 コルベールに推され、半ば強引にサモンサーヴァントの呪文を唱えるルイズ。 「ちょっとあんた!!そこを動くんじゃあないわよ!!」 と怒鳴ってから口付けのために近づいていく。 やはり…近づけば近づくほど、そうとしか見えない。 いや!これはサルの皮サルの皮!! 世界は広いのよ!こういうサルも居るわ!! ルイズが勝手に頭巾をめくり口付けしようとするが、その老婆の様な者に動きはない。 次の瞬間「ひッ!」っと、短い悲鳴を上げるルイズ。 頭巾の下に存在していた顔には、唇がなく歯が剥き出しで、頬の肉すら無い。 眼窩の中に目玉が納まっているが、それも白濁している。 ま、まるで亡者…亡者を見たこと無いけど。 死体を漁って貪り食うっていうあれね… だけど、これは逆に喜ぶべきことよね? あたしが平民を召喚したんじゃあないという事なんだから!! そうよ!空飛ぶ目玉とか、蛸の化け物とか、気色悪いカエルが立派な使い魔なら、こいつも立派な使い魔よ!! 良くわからない不気味な生き物だけど、平民よりずっとましよ! さっさと契約を済ませて、この汚らしいボロ頭巾を取って平民じゃないって皆に見せてやらなきゃ! そう意気込んだルイズは、その老婆の様な者の歯に(唇が良かったけど)口付けをした。 この人は誰? ピンクの髪の毛なんて…気持ち悪いわ。 まさか…ママを連れて行こうとするつもり? そんな事したら、暴れてやるんだから! ここに居る皆を殴ってやるんだから!! 本気なんだからね!! …でもそうじゃないみたい。あたしの顔を覗き込んだわ。 何をするの? 痛いことするの? …… キスしたわ。 そうしたら手が痛くなったの。 でももう痛いのには慣れたの。 いっぱいいっぱい銃で撃たれたから慣れたの。 でも…何?この感じは…? ママ?…あれ?ママは? これは…ママじゃない!! 折角見つけたのに!! ママ!!どこいったの?!! ママ!!どこなのママ!! …あれ?この人……ママ? ママなの? ママなのね? ああ!やっぱりママだった! 何で間違えてたんだろう? この人があたしのママだったんだわ! 髪の毛の色が変わってもわかったもんね! でも…体が小さくなってるの。 何でだろう? きっとあの悪い奴らに体を取り替えられちゃったのね? だから間違えちゃったんだわ。 まかせて!あたしが何とかしてあげるから! 「ミス・ヴァリエール、いつまで口づ…オホン…コントラクト・サーヴァントを続けているつもりですか?」 軽く口付けをすればいいだけの儀式を手間取っているルイズにコルベールが注意した。 周囲からは、ゼロだから念入りにやってるんだよ、そっち系の趣味なのかも、などと聞こえてくる。 だが、様子がおかしい。 そう思った時、ルイズの足元に、老婆が持っていた乳白色の物が落ちている事に気づいた。 それは年月を経た人の頭蓋骨だった。 いつの間にか、老婆の様な者の手が、ルイズの顔の方に伸びている。 そして、必死にその手を押さえるルイズ。 コントラクトサーヴァントを手間取っているのではない!あの者に顔を掴まれているのだ!! 「ミス・ヴァリエール!!」 そう叫びコルベールはルイズと使い魔の方へ駆け出した。 その刹那、嫌な音が当たりに響いた。 ブチ…ブチブチ…ビリビリビリビリィ!! ルイズの顔から、まるで花びらが散るように周囲に鮮血が噴出した。 「…ぁぁあああああああああああああああああああッ!!!!!!」 ルイズは悲鳴を上げ、弾ける様に後ろに転がった。 叫びながら顔をさえうずくまって行く。 周りの生徒たちは何が起きたのか判からず、ただ狼狽している。 「ミス・ヴァリエール!!!!しっかりしろ!!!」 コルベールが素早くルイズを助け起こしす。 「う!…」 絶句するコルベール。 「何ということだ…!」 顔が無かった。 ルイズは顔の皮膚を完全に、下あごから髪の毛の生え際まで全て失っていた。 剥ぎ取った顔の皮はルイズの使い魔、リサ・トレヴァーの手の中に在った。 リサはしばらく眺めると、それを高々と掲げた。 そして、この世界に召喚されてから初めて、言葉を発した。 「……マ゙ァァマ゙ァァァアアアアアアア!!」 -バイオハザード1のリメイクより悲劇の少女リサ・トレヴァーを召喚